fastapple's blog

時系列関係なく、情報を追記・分割・統合などします。ブログに記載の内容のうち、引用ではなく、私自身が記載している文章・コードなどについては、自由にご利用ください。

閏秒(うるう秒)とUTCについて



青春18キッパーの自分は、正月連休の旅行もそろそろ終わりというところで、ふらり明石駅で降り、歩いて明石市立天文科学館を訪れた。
明石城跡を通り、徒歩で辿り着くには15分程度歩く必要がある。明石市立天文科学館といえば、たまにテレビでうるう秒の挿入の際に、中継が行われるおなじみの塔時計がある。

http://www.am12.jp/shisetsu/toutokei/img/gaikan.jpg
塔時計|館内施設案内|明石市立天文科学館

閏秒UTCなどの説明について、分かりやすい展示があったので、閏秒ってどういう事なんだろう?と疑問を持っている人は、是非機を見て訪ねてほしい。
自分は、展示の説明をみてようやくなんとなく理解したので、ここで説明を試みたい。なお、説明が厳密でない部分については、ご容赦いただきたい。

子午線という言葉を聞いたことがあるだろうか?明石市立天文科学館は、東経135度の子午線(ちょうど協定世界時(UTC)から+9:00分だけ経度を進めた子午線)の上に建っている。この協定世界時(UTC)を9時間進めたものが日本標準時(JST)だ。

世界時と原子時

まず、UTC閏秒を理解する前に、世界時と原子時を理解する必要がある。

もともと1秒とはどういう単位だったかを考えると、1日の長さを24等分したもの(1時間)を、さらに60等分したもの(1分)を、さらに60等分したものが1秒である。
1秒のベースとなっているのは、1日の長さだった。では1日の長さはどうやって調べるのか?厳密ではないが、素朴に考えれば、それは太陽が一番高く上がった時刻を正午として、そこから次の正午までを1日の長さとしてよいだろう。
そのように、太陽の動きを中心に1日を考える発想が、世界時である。時刻という発想はこの世界時から始まった。
現在では、太陽を観測するよりも、遠方の恒星の子午線通過を観測する方が、より精度の高い世界時を求められる。現在では、遠方のクエーサーをVLBI電波望遠鏡で観測して求めている。
このように求められる世界時をUT0という。
UT0は観測地点によって異なる値を示す可能性があるが、それは地球の極運動による影響が場所によって異なるためである。
これを取り除いたものがUT1であり、これは地球のどの場所でも同じになる。現在、世界時といえば、UT1のことを指すと考えればよい。
なお、UT1は1日あたり±3ms程度のズレが生じるため、それを1年を通して平均的になるように均したものがUT2であり、以前は時間といえば、UT2が利用されていたが、UTCが登場してからはほぼお役御免となった。

さて、1秒は、もともとは1日の長さを基準にした単位だったが、科学の進歩により、1秒の長さをもっと厳密に求められるようになった。
そこで、厳密な1秒の長さをもとに、太陽などの観測に基づく1秒(つまり世界時)とは別に、1958年1月1日0時0分0秒(UT2)から時計を動かしはじめた。
この時計に基づく時刻が原子時であり、TAIと略される。1958年1月1日0時0分0秒(UT2)=1958年1月1日0時0分0秒(TAI)だったが、
もともと、1日の長さはズレることがわかっていたので、当然、UT2とTAIの差は広がることになる。
つまり、UT2を使う場合と、TAIを使う場合で以下のようなメリットとデメリットがある。
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これを解決するために提案されたのが、UTCであり、またその中で使われている閏秒という仕組みである。

閏秒UTC

UTCでは、1秒の長さは原子時と同じく固定だが、そのままでは世界時との差が広がってしまうために、閏秒を使った調整を行う。
世界時との差が0.9秒以内に収まるように調整することが決められており、6月末と12月末が第一候補だが、各月の23:59に行うことができる。
差を調整するために、23:59:59のあとに23:59:60秒を挿入するか、減ずる場合は、23:59:59を削除する。
これによって、UTCでは、1秒の長さを固定に保ちつつ、世界時との差を0.9秒以内に維持している。
閏秒 - Wikipedia

まとめ

科学的な単位というのは、元々はかなり素朴な所から来ていると云う事を再考するのは面白い。1秒の長さは元々は1日の長さから出発し、独自の道を歩き始めた。最初は具体的で素朴なものから出発し、徐々にそれを離れていくというのが、抽象化の一般手段だが、時々素朴な場所に立ち返れば、新たな発見があると思う。例えば、長さの単位であるメートルは、今は光が真空中に進む距離から導いているが、もともとは地球の円周を4万kmとしたことが原点である。最近少し話題になった三角関数も、三角比という素朴なところから抽象化されていった。素朴な世界と抽象化された世界、そういうところの交点にこういう興味深いトピックが転がっているようだ。