fastapple's blog

時系列関係なく、情報を追記・分割・統合などします。ブログに記載の内容のうち、引用ではなく、私自身が記載している文章・コードなどについては、自由にご利用ください。

建前の亡霊


何か特定の状況に名前をつけてやることは面白い。タイトルの「建前の亡霊」というのを、最近思いついた。

世の中には、本音と建前が存在しているわけで。本音と建前というのは日本人特有だとかそういう指摘もあるかもしれないが、もちろんそんなことはない。英語では、建前はOn the record、本音はOff the record (いわゆるオフレコ)というらしい。

ところで、タイトルの話だが、建前と本音を使いわけていると、時には誰も幸せにならない状況が起こってしまうものである。例を出してみよう。男A,B,Cと女D,Eでパーティーを開くとする。男性陣の狙いは全員共通して女Dである。一方女性陣の狙いは全員共通して男Aであるとしよう。図にすると次のような状況だ。
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顔アイコンが出席予定者、矢印が好意の方向を示している。建前では、特定の誰かが参加することを条件にすることは難しい。なのでここでは、3人以上出席することがパーティーが開かれる最低条件であることにしよう。これを建前条件と呼ぶことにする。ここで急な欠席により男Aと女Dが参加できない状況になったとしよう。次のような状況だ。

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みてわかるように、もはや誰も本音となっている目的が存在していない。こういう状況けっこうあるのではないだろうか。本音が存在しなくなり、建前だけが残ってしまう。ここで、このような状況に名前をつけてやろう。この誰も得しないパーティーのような状況を「建前の亡霊」と呼ぶことにする。

つまるところ、本音条件(目的のAかDが出席すること)と建前条件(3人以上の出席者がいること)にねじれが生じると、建前の亡霊が発生する可能性がある。もちろん、建前というのは、通常、本音条件よりも提示しやすい。だからこそ、建前がなくならないのである。

つまり

建前条件 ⊇ 本音条件

が、成り立つとき、建前の亡霊が発生する可能性がある。

少しばかり、これに対処する方法論を模索してみよう。建前の亡霊を起こさないようにするためにはどうすればいいか。つまり

建前条件 ⊆ 本音条件

とするためには、どのようにすればいいか。

この例で、男側の建前条件を本音条件をみたすように変換するには、女Dが参加することが建前を満たす必要条件であるように工夫すればいい。これは例えば、女Dの何かのお祝いという名目を作ってパーティーを開くことである。次のような状況だ。

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ここで☆(星マーク)が祝われる対象だとしよう。このようにしてやれば、女Dが不在になるとこのパーティー自体がなくなるので、男からすれば建前の亡霊は発生しないことになる。このような方法を、直接的束縛と呼ぶことにしよう。建前と本音を直接的に結んでしまうやり方だ。このデメリットは、実際のところ、本音が見透かされる可能性が高いということだ。また、別の点だが注意したいのは、このような直接的束縛を行っても、女D,Eからすれば、男Aが欠席する可能性が残っているので、建前の亡霊が存在している。

直接的束縛より高度な方法に、暗黙のコントロール可能条件の注入(以下ICI:implicit controller injection)という技がある。これは、自分がコントロール可能であるが他人にはコントロール不可能に見えるような条件を利用し、それを建前条件に加えるという方法である。ある意味で仮病などはこの一種だが、これはコントロール可能であることを疑わせる要素があるために、あまり高度とはいえない。このような束縛方法をICI束縛と呼ぶことにしよう。

次のような例はどうだろう。男Cは男Bの性格を知っており、女Dが来なければパーティーを欠席することを把握しているとしよう。ここで、男Bのお祝いを開くことを男Cから提案する。もし、女Dが来なければ、男Bは何かの理由をつけて来れなくなることがわかっている。そうすると、男Bが来なければパーティーは成立しないため、パーティー自体がなくなる。このようにすれば、男Cにとって建前の亡霊が発生することはなくなる。ここで、男Bがでっちあげる理由は、男BにとってのICIである。しかし、男Bがこれなくなるというのは不自然で、男Bがでっちあげた理由が男BにとってのICIであることは全員から「見えている」ので、男Bは他人からは訝しがられるだろう。しかし、男Cが訝しがられる可能性は少ない。なぜなら男BというICIに対して、本音条件を束縛しているからである。このような方法をICI間接束縛と呼ぶことにしよう。図にすると次のような状態である。

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ここからもっと色々考えても面白そうだが、何はともあれ、
このようにして、ようやく男Cは本音を隠しながら建前の亡霊を回避することに成功する。