fastapple's blog

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【書評】 「洞察力」があらゆる問題を解決する


タイトルがなかなか面白そうだと思った。この本の作者であるゲイリー・クラインは、NDM(Naturalistic Decision Making)理論(現場主義的意思決定理論)というのを提案している。

以下は自分の理解なので、別の人が本を読んでも異なる印象をもつ可能性もあるし、本の内容からすると、独自の飛躍があるかもしれないが、あくまでも自分が考えることを記す。

本の内容は、NDM理論自体についての詳細な説明というよりは、あくまでも洞察力(Insight)を強くするにはどうすればいいのか?という事を追及する内容だった。

現場主義的というのは、「事前準備できない困難」に対応する力という事をいっているんだと思う。

この本に出てくる数々の「人々が洞察力を発揮するエピソード」は、それを読むだけで非常に参考になる。

ただし、どうすれば洞察力が発揮できるのか?というこの本の説明については少し納得度が低い部分もあった。

とりあえずマインドマップから貼っておく。

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はじめの例の、車内にタバコの吸い殻を落とした容疑者の話は、「矛盾から見抜く」の例となる。そのとき、本書では、誤った考えの固執が洞察力の察知を妨げるということになるが、もう一歩踏み込んでも良いような気がした。

マインドマップに表現したように、人間が何か予測不可能な行動をとったときに、変わった人なんだ。と決めつけるのではなく、環境がそうさせたのだ。と考えると、別の視点が見えてくる場合がある。この例の場合はまさにそれだ。

即ち、矛盾を発見した場合に、人の内面の問題にするなど、すぐに矛盾をブラックボックスに落とし込んで解決しようとする思考習慣は改めたほうが良い。何か外部要因があるはずだと考えると、その要因が見つかる可能性があるということだ。

また、「矛盾」のほかにも「偶然の一致」にも目を配る必要がある。なにか偶然の一致があったときに、たまたまで済ませるより、何か因果関係があるのではないか?と探してみることが重要となる。

また、何事かについて経験を積むと、ふとした瞬間に出来事が予期する別の出来事のつながりが見えたりするものだが、これは経験を積むしかないので、何か心理的に心がけるというよりは、ひたすら経験を積むだけである。

また、絶望的な状況下でのやけっぱちの推論というのは、自分なりの解釈では、大損失の前の小損失。と考えられる事例だった。予防接種のような考え方で、大きな損害が目に見えている場合は、先に小さな損害を受けることで回避できる可能性があるのだ。またこれは逆もしかりだと思った。小さな得で満足すると大きな損を見逃す場合がある。これはプロスペクト理論にも通じるところがある。

この本を読んで心がけたいと考えるポイントを挙げるとすると下記のとおり。

・矛盾を見つけたとき、原因は絶対にブラックボックスにはない。ブラックボックスを回避するような理由付けを考えてみること。
・偶然の一致を見つけたとき、因果関係が隠れている場合がある。探してみること。
・大きな損失を予期したとき、小さな損失で回避可能な場合がある。
 ※逆に、小さな利得を予期したとき、大きな利得が隠れている場合がある。

本書の中ではITシステムは洞察力と相性が悪いという指摘があり、確かにそのとおりであると思ったのだが、現実的にITシステムを利用することのメリットは計り知れないので、洞察力を殺さないようなITシステムの在り方など、そういった部分の議論が知りたいところだった。本書では批評に留まっていたように思う。